30代・40代の家計を預かる皆さんにとって、「子どもの教育費」と「マイホーム」は最優先事項になりがちです。しかし、ファイナンシャルプランニングの視点から見ると、「老後資金」こそ、何よりも先に貯め始めるべき資金であると言えます。
なぜ、目の前の教育費や住宅ローンを上回って老後資金が優先されるのでしょうか?その理由は、「資金調達の柔軟性」にあります。
資金計画の優先順位は、「外部から調達できるか否か」で決まります。
| 資金の種類 | 資金調達の柔軟性 | 優先順位 |
| 老後資金 | 借りられない(原則自己資金のみ) | 最優先 |
| 教育資金 | 奨学金、教育ローン、国の支援制度がある | 2番目 |
| 住宅資金 | 住宅ローンがある | 3番目 |
📌 老後資金は「自己資金」が唯一の頼り
年金生活に入ると、収入が安定しないため、金融機関からの融資(ローン)を受けることは極めて困難になります。老後の生活費は、基本的に公的年金と自分たちの貯蓄・運用資産だけで賄わなければなりません。借りることができない資金だからこそ、現役時代に確実に準備を始める必要があるのです。
📌 教育費や住宅資金には救済策がある
一方で、教育費は「奨学金」「教育ローン」、住宅は「住宅ローン」といった形で、金融機関や公的機関から借り入れの選択肢があります。借り入れには利息負担がありますが、資金が不足した場合に「ゼロから作り出す」よりはるかに現実的な解決策です。
老後資金を早く貯め始めるべきもう一つの決定的な理由は、「複利効果」にあります。
- 老後資金:30代から始めれば運用期間は30年〜40年。時間があるため、少額でも複利(利益が利益を生む仕組み)の力を最大限に活かせます。
- 教育資金:必要な時期が10年〜15年後と決まっているため、運用期間が短く、大きなリスクも取りにくいという制約があります。
「投資は知識よりも時間が勝つ」**と言われます。30代・40代の皆さんは、教育費を貯めるよりも圧倒的に長い「時間」を老後資金に使えるため、このメリットを逃す手はありません。
「老後資金を優先したら、教育費の貯金ができないのでは?」という心配は不要です。国の優遇制度を活用すれば、両者を並行して効率よく準備できます。
- 老後資金の柱:iDeCo
- 強力な節税効果(掛金が所得控除)があり、老後資金と割り切って資金をロックできる。
- 教育費の柱:新NISA
- いつでも引き出し可能なので、数年後の教育費にも柔軟に対応できる。
まずは、家計から無理なく捻出できる金額を見つけ、老後資金の自動積立(iDeCoやNISA)を今日からスタートさせましょう。借りられない未来の資金を優先することが、家族の安心を築く最善の道です。

