「100年前の日本って、どんな暮らしをしていたんだろう?」
最近では、大正時代を舞台にしたマンガやドラマも増え、当時の人びとの装い、建物、言葉づかいなどに興味をもった方も多いのではないでしょうか。
ちょうど一世紀前の大正時代。そこには、今とはまるで違う価値観と、それでもどこか通じ合える“人間らしさ”が息づいていました。
この記事では、そんな大正時代の社会・文化・暮らしぶりをたどりながら、「100年」という時間の流れが何を変え、何を残してきたのかを考えてみたいと思います。
大正時代は1912年から1926年までの15年間。
短い期間ながら、日本の近代化がぐんと進み、「個人の自由」や「市民社会」という考え方が広まり始めた時代でもあります。
● 大正デモクラシーの時代
「大正デモクラシー」とは、政治や社会に市民の声を反映させようとする動きが強まった時期のこと。
1925年には**満25歳以上の男性に選挙権が与えられる「普通選挙法」**が成立し、日本の政治が大きく動き出した瞬間でもありました。
(ちなみに女性に選挙権が認められたのは、その20年後の1945年です。)
● 大正ロマンが彩った文化
西洋文化の影響を強く受けたファッションや建築、芸術が花開いたのもこの時代。
モダンガール(モガ)やモダンボーイ(モボ)と呼ばれる若者たちが、洋装に断髪スタイルで街を歩き、カフェで音楽や映画を楽しむ。そんな**“自由でおしゃれな空気”**が、大正ロマンと呼ばれる文化の背景にありました。
● 世界の大きな出来事と、日本の転機
1914年から始まった第一次世界大戦。当初は遠い国の争いのように思われていましたが、日本は貿易の活発化で好景気を迎えます。
ところが戦後は一転して大不況。社会不安が高まり、関東大震災(1923年)も発生し、多くの人が混乱と再建の中で暮らしていました。
一方で、1920年には国際連盟が発足し、日本も常任理事国として加盟。世界における“日本の存在感”が少しずつ広がっていった時期でもあります。
では、当時の人びとは、どんな生活をしていたのでしょうか?
● 給料はどれくらい?
大正末期の大卒サラリーマンの初任給は月に50〜60円ほど。
ちなみに女性の職業婦人(タイピストや電話交換手など)の平均月給は30〜40円だったと言われています。
数字だけ見ると今とはまったく違いますが、物価も当然異なっていました。
● 物価の感覚、ざっくり比較!
- お米1升(約1.5kg) … 約50銭
- タクシー初乗り … 約60銭
- 金1gの価格(1925年) … 約1円73銭
そして現代(2020年代)の相場はというと…
- お米1升 … 約1,500円前後
- タクシー初乗り … 約410〜730円
- 金1g … 約6,500円以上
物価の変動に驚かされますが、それだけ**“お金の価値観”も社会とともに移り変わる**ということかもしれません。
大正時代の人びとが、インターネットやスマートフォン、AIなどが活躍する現代の暮らしを想像できたでしょうか?
おそらく、ほとんどの人が想像もつかなかったはずです。
それでも、100年前の人たちも夢を持ち、悩み、誰かを想いながら日々を生きていたことに変わりはありません。
私たちは今、「大正時代の人びとにとっての未来」を生きています。
ということは、今日この日もまた、**100年後の未来に続く“現在”**だと言えるでしょう。
これから100年先、社会はどう変わっていくのか。
何が進化し、何が失われ、そしてどんな価値が新たに生まれるのか——。
遠いようで、実はとても身近な「100年後」という未来。
今この瞬間をどう生きるかが、未来を少しずつ形づくっていくのかもしれません。
歴史を知るというのは、ただ昔の出来事を覚えることではありません。
「この時代の人たちは、どんな気持ちで生きていたんだろう?」
「今の暮らしに似ている部分はあるかな?」
そんな風に考えることが、自分たちの未来とどう向き合っていくかを考えるきっかけになります。
100年前をのぞいてみると、私たちの今が少し違って見えるかもしれません。