「もしかして、これって認知症?」
こんな疑問を抱いたとき、あなたはどこに相談しますか?
高齢社会が進む今、認知症は“いつかの話”ではなく、誰にでも起こり得る身近な課題となっています。2022年の推計では、65歳以上のうち約12%が認知症、さらに約16%がその前段階である軽度認知障害(MCI)というデータも。つまり、高齢者の3人に1人が認知機能に何らかの課題を抱えているというのが現実です。
本記事では、認知症の基本知識から初期症状の見分け方、予防法やサポート体制までをやさしく解説します。
認知症とは、加齢による単なる“もの忘れ”とは異なり、脳の神経細胞が徐々に壊れていくことによって、記憶力・判断力・言語能力などの認知機能が低下する状態を指します。日常生活や社会生活に支障をきたすため、早期発見と支援が極めて重要です。
加齢によるもの忘れ | 認知症によるもの忘れ |
---|---|
体験の一部を忘れる | 体験自体を忘れる |
自覚がある | 自覚がないことが多い |
進行が緩やか | 徐々に進行し、生活に支障を来す |
認知症の種類と特徴
代表的な認知症の種類は以下のとおりです。
種類 | 特徴 |
---|---|
アルツハイマー型認知症 | 最も多い型。脳内にアミロイドβが蓄積され神経細胞が破壊される。記憶障害から始まり徐々に悪化。 |
血管性認知症 | 脳梗塞や脳出血などの後遺症で起こる。段階的に進行し、症状のばらつきが大きい。 |
レビー小体型認知症 | 幻視や筋肉のこわばり、動作障害などパーキンソン病に似た症状も。 |
前頭側頭型認知症 | 感情や行動に異常が現れ、社会的ルールを守れなくなる。 |
初期症状チェックリスト
「何かおかしい」と感じたら、早めの行動が大切です。以下のような症状が見られる場合、医療機関への相談をおすすめします。
- 同じ話や質問を繰り返す
- 財布や通帳などを何度も探す
- 約束の日時や場所を忘れる
- 突然怒りっぽくなった
- 趣味への関心がなくなった
- 「最近、様子が変」と家族から指摘される
認知症かも?と思ったときの行動フロー
- 家族や周囲と相談
- かかりつけ医を受診
- 必要に応じて専門外来やもの忘れ外来を紹介してもらう
- 早期診断・早期治療へ
最近では、進行を遅らせる新薬(抗アミロイドβ抗体薬)の登場により、早期発見のメリットがさらに高まっています。
若年性認知症にも注意を
65歳未満で発症する「若年性認知症」も注目されています。平均発症年齢は54歳。働き盛りや子育て世代の人にも発症の可能性があり、職場や家庭に大きな影響を与える課題となっています。
こうした方には、就労支援・経済支援・子育て支援などの専用サポート制度が用意されています。
認知症の予防にできること
認知症は完全に防げるわけではありませんが、発症リスクを下げたり、進行を遅らせたりすることは可能です。特に生活習慣の改善がカギを握ります。
- 定期的な運動(ウォーキング・ストレッチなど)
- バランスの取れた食事(和食中心)
- 十分な睡眠とストレス管理
- 人とのつながり(会話・趣味・地域活動)
「体を動かし、脳を働かせ、人と関わる」が3本柱です。
認知症になっても“自分らしく”暮らすために
2024年には「認知症基本法」が施行され、社会全体で共に支える“新しい認知症観”が打ち出されました。認知症の人を単なる支援対象として見るのではなく、一人の個性ある人として共に生きる仲間とする考え方です。
「認知症希望大使」たちによるメッセージ発信や、当事者同士のミーティングなどの取り組みも、全国で広がっています。
相談できる場所・地域の支援
- 地域包括支援センター
お住まいの市町村で認知症に関する相談窓口を設けています。 - かかりつけ医・もの忘れ外来
- 公益社団法人 認知症の人と家族の会
☎ 0120-294-456(月~金 10:00〜15:00)
認知症カフェは、当事者・家族・専門職が気軽に交流できる場です。孤立を防ぎ、前向きに生活するための支えになります。